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北マルク諸島・レポート

ディスカバリ-インドネシア
2014年2月5日、戸倉隊長のもと、精鋭部隊が成田空港北ウィングに集結した。未だ見ぬバ-ジンウェ-ブを求めて、
インドネシア北東部に位置する北マルク諸島へ向かうためだ。我々は12時発のガル-ダインドネシア航空885便に搭乗し、大雪に見舞われた日本列島を尻目に常夏の国インドネシアの首都ジャカルタに向け定刻どおり成田空港を後にした。

ボ-トトリップ初日。フィリピンの沖合を通過する猛烈なロ-プレッシャ-の影響で当初予定していたハルマヘラ島西側ル-トの海上が荒れているという情報をキャッチした為、事前にボ-トを島の反対側に移動し、東ル-トを通って北上することになった。今回の旅の友である全長21メ-トル、ウッドを基調にしたとても美しい帆船SAMASAMA号はオイリ-フェ-スの穏やかな海上を最初の目的地に向かって順調に滑り出した。

最初に我々探検隊を出迎えてくれたのは2~3feetと小ぶりだがピ-クから綺麗にカ-ルしてくるコンパクトなレフトだった。早朝はピ-クが定まらずテイクオフポジションに苦労したが、潮の上げと共に奥のポジションからブレイクが整いだした。

心地よい自然光を全身に浴びながら、クリスタルブル-に輝く波と戯れる。
ここは常夏のインドネシア、何とも贅沢な瞬間だ。

こうして今トリップのファ-ストセッションは寒い日本で調整不足であった我々にとって最高のウォ-ミングアップとなった。ファンウエ-ブを満喫した一行は協議の結果、さらなるグッドウェ-ブを求めて北上する事にした。

翌朝。我々戸倉隊一行は、早くもこのトリップのクライマックスといえるシ-ンを体験する。そこは見渡す限りほぼ水平線しか見えないアウタ-リ-フの棚で半径200メ-トル程度の楕円形になっておりリ-フのへりは垂直に深海まで落ちている、いわゆるドロップオフになっているのだがその深さは半端なく裕に200~300メ-トルはあるらしい。リ-フの内側と外側では海面の色が全く違い極端なコントラストを作り出している。

そんな壮大な景色の中、グランドスウェルがオフショアに靡きながら容赦なく我々の隊目指して牙を剥いてくる。
最初のビッグセットをものにしたのは何と最高齢の戸倉隊長だった。ボトムの深いところまで一気に滑り降り、深いボトムタ-ンから一気にトップへ駆け上がる。長く深いトラックを刻みながら大量のスプレ-が青空に舞い、再びボトムへ。力みも焦りも全く感じないナチュラルなライディングを目の当たりにした我々一行は、尊敬の念を抱きながらインサイドでプルアウトするまで、戸倉隊長のライディングにくぎ付けになったのは言うまでもない。

その直後の事だ、ポイントを覆っていた雲が徐々に取れ始め、朝から時折落ちていたシャワ-も上がり、晴れ間が差し始めた。突如、頭上にはダブルレインボ-が、我々の北マルク諸島訪問を歓迎してくれているかのようだった。私はすかさず旅の安全と成功を祈願した。

そして、この戸倉隊長の一本が合図となり、夢のようなセッションがスタ-ト。隊員たちは一斉にジャンピングイン、ピ-クに向かって漕ぐパドルにも自ずと力が入る。メンバ-各々が思いのままに巨大な波のフェ-スにトラックを刻んでいく。十分に波と戯れ、上腕二頭筋とヒラメ筋に疲れがあらわれ始めたころ、再び突然のシャワーに見舞われた。暫くすると潮が引き、カレントも強くなってきたので明日に期待して早めに引き上げることにした。

翌日は、期待に反してサイズダウン。軽く1ラウンドをこなしてから次の目的地へ向かった。

途中、真っ白い砂に海が青々と映えるとても綺麗な小さな無人島を通過しようとした時だ。水平線に何本かスジが見えた。セットだ!誰かが叫ぶのと同時にSAMASAMA号もそのスウェルを息を飲んで見守った。

先程までの大海原のド真ん中というロケ-ションとは対照的に島から張り出しているハウスリ-フは比較的岸の近くでバレルを伴いながら規則正しくライト方向にブレイクしていくパ-フェクションだ。しかも、島の先端で東、北、西の三方向に開けている。ウネリは最初、北東方面から押し寄せ、島の北~西側面の棚に沿ってラップしながら内側へ回り込んでくる、そしてエンドセクションが近づいて西に向いたその瞬間、左方向から肉厚の強烈なリップがビッグバレルを伴って弾け飛んで来るではないか!

それを見たメンバ-はピ-クから波を捉え、いよいよその最終コ-ナ-のボウルセクションへ突入していくのだが
ことごとくボトムから巻き上げられてカ-ルに消えていく。わかっていても、そこで餌食となって痛い勲章をもらっていた。プロサ-ファ-には垂涎ものでも我々にはちょっと厄介なポイントだという事で意見が一致し更に北上することにした。

北マルク諸島を形成する、ハルマヘラ島やモロタイ島、アンボン島等はその昔、クロ-ブやナツメグなど香辛料の産地として栄え、スパイスアイランドの名称で世界的に知られていたエリア。大東亜戦争の戦禍でも現在は真珠の養殖や林業、農業などで生計を立てている。また、大東亜戦争時ではこの辺りが激戦区となっていた。

アクセスはインドネシアの首都ジャカルタを経由してテルナテ島へ。そこからサファリボ-トに乗り換え、一路パシフィックオ-シャンサイドへ海図や海洋予報などを頼りに太平洋沿岸の棚をくまなくサ-チ貪欲にバ-ジンウェ-ブを探し求めて我々を乗せた女神SAMASAMA号は、東方西走した・・。


航海4日目、この日は風向きが安定しない、東かと思えば西に、西向きのポイントに移動すれば東にと自然の気まぐれに翻弄された一日だった。小さな入り江に風を交わすビ-チブレイクを発見、ディンギ-で波の背から近づいてみる
と意外やセットの波は裕にヘッドオ-バ-はある。パワ-も十分ありタナボタの楽しいセッションとなった。

明日は、いよいよこのトリップで一番期待が持てそうなモロタイ島の最北端へ移動する。この辺りはオ-プンフェ-スになっていてあらゆる方向のスウェルをキャッチする。波の事を考えると期待に胸が膨らみ中々寝付けなかった。
夜中に天井を激しく叩きつける雨音で目が覚める。船も左右に大きく揺れ今にもベッドから振り落とされそうだ。どうやら嵐が近付いているようだ。急いでデッキに出てみると既にキャプテン、クル-総出で出向の準備をしている。
横殴りの激しい雨が容赦なく叩きつけてくる。キャプテンの素早い判断で錨を上げ、全速前進で何とか暴風域を抜けだしたSAMASAMA号は巡航速度にもどり、ゆっくりと次の目的地に向かった。

ここはサーフスキッパ-のジョコが以前にサ-フした経験があり、本人一押しのレフトハンダ-だ。前述したように、彼は地元フランスでも結構知れたレフトハンダ-のアドバンスサ-ファ-でとにかくフロントサイドの波を好むのだ。そんなレフトブレイクを贔屓目に見ているジョコの事だから話半分で聞いていた。そして、ポイントに着くもジョコの表情はいま一つ輝いていない。むしろ曇っている。それでも、まずは入水し、各々、セッションを楽しんだ。この辺りでは一番のポイントと豪語していたほどではないが寒い日本を抜け出してきた我々アマチュアサ-ファ-には申し分ない位に良い波であった。一セッションを終えたあたりからオフショアが吹き出し、少しまとまりのなかったフェイスが整いだした。

するとウネリもコンスタントに入り始め、先程とは大きく変貌を遂げていく。ピ-クは4feet近いセットも入り始め、バレルも出現、すかさず、ジョコがジャンプイン、チュ-ブ、リップ、カ-ビングと縦横無尽に波を切り裂く、ワンマンショ-の始まりだ。我々もすぐ後から続く、サンセット間際に現れたパ-フェクションを存分に楽しみセッションを終えた。その晩のビンタンは格別に旨かった。極上の波に乗った満足感と適度な疲れ、そして何より明日への期待も加わって大いに盛り上がった。

翌日は昨日のイブニングセッションとまではいかなかったが、それでも3からセット4feetのシェイプの整った波が次から次へと打ち寄せてくる。そして、そこにいるのは我々、気の知れたのメンバ-だけ。


よくもこの地まで足を運んできたなと、戸倉さん率いる戸倉隊の波に対するどん欲な探究心には頭が下がります。

旅もいよいよ終盤、、うねりの方角とサイズから次の目的地がどうやらこの旅の最終ポイントとなりそうだ。我々の期待を一心に背負ったSAMASAMA号はゆっくりと南下を始めた。そこはモロタイ島本島の沖合にある離島で、北西のウネリが本島の西側にぶち当たり、島の側面を舐めるように内側へ流れ込んでくる。浅瀬の棚にたどり着くころには余分な部分はそぎ落とされ、綺麗にシェイプされた極上のウネリだけが運ばれてくる夢のような場所であった。


ただ、残念なことに前日から大気の状態が安定せず小雨交じりの曇り模様で風も巻いていた為、ベストなコンディションとは言えなかったが、それでも時折入ってくる3feetオーバ-のセットはピークからインサイドのエンドセクションまで完璧なブレイクをみせメンバ-を歓喜させた。ベストコンディションの時にどの様な波が炸裂するかは誰もが容易に想像できた。


こうして、我々の未だ見ぬ波を探し求めた北マルク諸島のディスカバリ-ツア-は予想以上の成果を上げ任務を終えた。また、この度の航海中、我々以外、どのボ-トにも、どのサ-ファ-にも出逢う事は無かった事をつけ加えておこう。  

PHOTO/ nobufuku
REPORT/ JJ

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